2つめは、自律神経の障害から起こる様々な症状を見ていきましょう。
知っていなければ危険を伴い、本人も家族も苦しむ大変な症状なのですが、医療・介護の職員でもよく知らない場合が多いので注意が必要です。
以下は、レビーの発見者である小坂憲司医師著「第二の認知症 増えるレビー小体型認知症の今」(P.88〜91)と小阪憲司・羽田野政治著「レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック」(P.66〜76)からの抜き書きです。
< 自律神経症状 (自律神経障害)>
原因:レビー小体が、脳内だけでなく全身の自律神経(心臓、胃、腸、皮膚など)に現われ、それが自律神経症状(自律神経障害)を起こす。
症状は、数え切れない程あるが、現われ方は、人により違う。自覚症状に乏しい場合も。
パーキンソン病、シャイ・ドレーガー症候群(後にレビーだったと判明する例も少なくない。)やメニエール病も自律神経症状をきたす代表的病気。
< 代表的な症状 >
*起立性低血圧
立ち上がったり、起き上がった時などに急激に血圧が低下する症状。
立ちくらみや失神を起こす。食後には特に起こりやすいので転倒に要注意。
普段から低血圧がある人だけに起こるものではない。 (注1)
(降圧薬、血管拡張薬、利尿剤、抗パーキンソン病薬で起こる場合もある。)
*体温調節の困難/発汗障害
多汗。(何度も着替える程の大量の汗をかく。寝汗の場合も)
無汗。(汗が出ず、体内に熱がこもって発熱することもある。)
(上半身が多汗で、下半身は無汗という例もある。) (注byしば)
低体温症になりやすい。(手や足だけが局所的に冷えることもある。)
*便秘、頻尿、尿意切迫感、尿もれ、尿失禁(排泄に関する障害は非常に多い)
*めまい
目が回る「回転性めまい」よりも「浮動性めまい」(ふわふわ、ゆらゆら揺れる感覚)が多い。(「動揺性/非回転性めまい」とも言う。)
*皮脂の分泌が盛んで、顔がテカテカと脂ぎった状態になる。(脂漏性顔貌)
それによって皮膚炎を起こすことも。
その他の症状(人によりまちまち)
倦怠感(だるさ)/頭痛/耳鳴り/イライラ/微熱/むくみ/肩こり/
背中の痛み/のぼせ/しびれ/動悸/息苦しさ/頻脈/血圧のバランスの悪さ/胸痛/食欲不振/インポテンツ/ドライアイ等
<体温調節 自宅介護のコツ>
●手足の冷えには、入浴(ぬるめの湯)、足浴、手浴が効果的。
●体温調節が難しい場合には、室温は、25度程度。湿度40〜60%に保つ。
●被服内温度(着衣の中の温度)は、31〜33度に保つ。
●部屋と各場所(トイレなど)の温度が、5度以上違わないようにする。
(抜き書きはここまで)
注1)「”原因不明の意識消失発作(5分位の失神)があり、精密検査をしても原因不明。1ヶ月に2回程続いた”などという既往があればレビー小体型認知症です。」(河野和彦著「コウノメソッドでみる認知症診療」P.42)
注byしば)多汗・無汗(体温調節困難)は、突然切り代わることがあるので常に注意が必要です。夜中に「暑い、暑い」と大汗をかいて、しばらくすると「寒い、寒い」と震えたりもします。
天候(悪天候、低気圧、台風、寒暖の差の激しい時期)により心身の状態が悪化することもあります。
眼球や頸動脈(首の左右の付け根)を強く圧迫すると血圧低下が起こり意識障害、気絶、生命の危険もあります。顔を拭く時や着替えの時には、注意が必要です。 (医師のコメントから)
症状追記:声が小さく抑揚がないのも特徴。書く字が小さい。まばたきが少ない。
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*カテゴリ:「レビーと各種認知症の症状と早期発見チェックリスト)」
*「レビー小体型認知症の特集記事(朝日新聞)」(非常に詳しい。)
*「レビー小体型認知症の症状と誤診の多さ(患者は医師に幻視を訴えない)」