これはレビー小体型認知症家族会の公式サイトの記事です。
掲載した薬剤名は、レビー小体型認知症の専門医(小阪憲司医師)らの著書、論文からの転記です。出典を明記してあります。
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「レビー小体型認知症患者が注意すべき薬剤一覧」
●極微量で始め、十分な注意が必要な薬
1. 抗精神病薬 2. 抗うつ剤 3. アリセプト(ドネペジル)
5. 降圧剤、胃腸薬、吐き気止めの一部
出典:「レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック」
小阪憲司・羽田野政治著 (2010年9月発行)P.84〜94
●痛み止めなどの市販薬で具合が悪くなってしまったなどということもあるので注意が必要です。
(小阪憲司著「レビー小体型認知症がよくわかる本」P.30)
● 薬剤性パーキンソニズムを起こすためレビーには使用を避けるべき薬
ハロペリドール (セレネース)
クロールプロマジン(クロルプロマジン:ウインタミン・コントミン)
オランザピン (ジプレキサ)
リスペリドン (リスパダール)
アリピプラゾール(エビリファイ)
老年医学 Geriatric Medicine Vol.49 No.7 2011年7月
P.792-P.793「レビー小体型認知症(DLB)・認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の治療」和田健二 田中健一郎 中島健二
(鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経内科学分野)
●レビー小体型患者のパーキンソン症状を特に悪化させやすい薬
リスペリドン (リスパダール)
ハロペリドール(セレネース)
スルピリド (ドグマチール)
ドネペジル (アリセプト)
出典:「認知症薬物療法マニュアル2013」河野和彦医師
●薬剤性せん妄を起こしやすい薬
(出典:2013年2月15日笠間睦医師による朝日新聞医療サイト記事)
1. ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬
2. 抗ヒスタミン薬 (かぜ薬・アレルギー治療薬など)
3. 抗潰瘍薬の一部 (シメチジン、ガスターなど)
4. ステロイド 5. 抗うつ薬 6. 抗コリン薬
● 下痢止め(ストッパ等)、風邪、鼻炎の薬は、アセチルコリンを押さえ認知機能を低下させる。(出典:池谷裕二著「海馬」P.196)
<その他参考にした文献>
*「高齢者が服用すべきではない薬剤の一覧」
(国立保健医療科学院・今井博久氏作成。2008)
*「医療用医薬品の添付文書情報」(「医薬品医療器具情報提供HP)
*「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬ガイドライン」
(H24厚生労働省事業により研究班作成)
*「厚生労働省作成 薬剤性パーキンソニズムマニュアル」H18年度
レビー小体型認知症は、薬に弱く、薬が効き過ぎる特性(薬剤過敏性)があることは、これまで繰り返しご説明した通りです。
それは、下戸(お酒に弱い人)の飲酒にとても似ています。
お酒(薬)で上手く歩けなくなったり、もうろうとして会話ができなくなったり、更には動けなくなってしまいます。
百薬の長(薬)も(量や種類によって)下戸には、毒になるのです。
お酒と同じように個人差は非常に大きいです。
中には、薬剤過敏性がないに等しい方から、(稀な例ですが)どの薬も副作用がひどく、一切飲めないという方まで現実にいらっしゃいます。
しかし認知症専門医でも、レビー小体型認知症の薬剤過敏性については
よく知らない方が、今でも決して珍しくはありません。
(アルツハイマー型に関しては、精通されているのだと思います。)
まして内科、整形外科、眼科など他の科の医師では、レビー小体型認知症という病名を知らない方もまだまだいらっしゃいます。
そのため、認知症治療もですが、他の病気でかかった医師から
処方された薬を飲んで悪化したという体験談も度々伺っています。
印刷用の「注意するべき薬一覧」のメモを作りましたので、
どんな病院に行く時にも必ず持参して、医師に手渡して下さい。
もしリストの中にある薬を「これは必要な薬。大丈夫だ」と言われたら
「念のために」微量から始めるようにお願いして下さい。
「半量から始めて、様子を見て増やしていっても良いでしょうか?
もし合わないようだと感じたら電話でご相談してもよろしいでしょうか? 私の判断でまず中止し、後でご相談しても構わないでしょうか?」
と訊いてみて下さい。
可能なら、納得のいくまで、十分に話し合って下さい。
決して不信感を示すのではなく「レビーの特性上、薬に弱く、心配があるので、万一の場合を考えて備えたい」という友好的な低姿勢で。
一覧の中にない薬でも「普通の方には起こらない反応(副作用)」を起こす方もいらっしゃいます。
どんな薬でも、飲ませたら、必ず、その良い効果、悪い効果を慎重に詳しく観察することは、レビー小体型の介護には、必須です。
逆に多くの患者に効く薬でも、全く効果が出ないということもあります。
幻視に効果の高い抑肝散(漢方薬)も効果が出ない方には、全く出ません。
多くの種類の薬をただ漫然と飲み続けるのではなく、医師に相談を。
薬(主に副作用)にさえ十分に注意し、
本人に安心を与える接し方(適切なケア)さえできれば、
レビー小体型認知症は、決して怖い病気でも難しい病気でもありません。
過敏なだけに、少量の薬がとてもよく効いたり、副作用の出ていた薬を
止めたり減らしたりするだけで劇的に良くなる利点もあるのですから。
そうして、病気ではあっても、長年、穏やかに笑顔で生活していらっしゃる方々は、大勢いらっしゃいます。
<関連記事>
*認知症医療の問題点 (リンクでレビー小体型の治療)
65歳未満で発症する認知症を若年性認知症(若年認知症)と呼びます。
映画「明日の記憶」「私の頭の中の消しゴム」やドラマ「純と愛」等でご存知の方も多いと思います。
全国で、推定3万7800人(人口10万人当たり47.6人)。
(2009年3月厚生労働省公表の調査結果)
でもレビー小体型に限れば、最初から正しく診断される方は、
ほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。
パーキンソン症状から始まった場合は、パーキンソン病。
不眠、頭痛、体調不良、集中力低下などから始まった方は、
うつ病と誤診された例を複数聞いています。
「更年期障害でしょう」と言われた例もあります。
パーキンソン病と診断されたHさんもうつ病と診断されたKさんも
レビー小体型と正しく診断されるまで10年かかっています。
お2人共、大変体調が悪くなってから、やっとレビー小体型と分かりました。しかし適切な治療を受けた後、ずいぶん回復されています。
若年性レビー小体型認知症に関しては、
まだ医学会でもよく分かっていない状態です。
調べても、「進行が早い」など希望の持てる情報は、ほとんど出て来ません。
でも私が、知り合った若年性レビー小体型の方々は、適切な医療やリハビリを受けながら進行を確実に遅らせ、前向きに生活していらっしゃいます。
決して進行が早いとは言えません。
以下、3人の方の体験談へのリンク集です。(私のブログにつながります)
<10年間うつ病と診断されていたKさんの記事>
* 今までの経過 * 症状(幻覚・意識障害)
<10年間 パーキンソン病と診断されていたHさんの記事>
<うつ病と誤診されたominaeshiさんの記事>
*経過・気持ち(全3回)
リアルな幻視(幻覚)は、レビー特有の症状です。
アルツハイマー病等でも見えますが、レビーの方ほど詳細に描写できません。
「他の認知症では、虫の幻視は聞かない」という印象を語る医師もいます。
レビー小体型認知症患者は、
パーキンソン症状から始まれば、パーキンソン病、
物忘れから目立ち始めれば、アルツハイマー病、
うつ症状が強い方は、うつ病と診断される例が、非常に多いです。
レビー小体型認知症の「3大症状」(幻視/パーキンソン症状/認知の変動)の1つを見てみましょう。
「認知症でも、しっかりしてる時もあるんです。調子が悪い時は、ボケてるように見えますけど、調子が良い時は、ごく”普通”です」
レビー介護家族の口からよく聞く言葉です。
今回は、「最も早くから出ることの多い症状」と「最も家族を驚かせ悩ませる症状(せん妄)」について見てみましょう。
「せん妄」という言葉は、一般には知られておらず、誤解されていることがとても多いです。しかし具体例を見ると当てはまる方が、大勢いらっしゃると思います。是非、注意してチェックしてみて下さい。
2つめは、自律神経の障害から起こる様々な症状を見ていきましょう。
知っていなければ危険を伴い、本人も家族も苦しむ大変な症状なのですが、医療・介護の職員でもよく知らない場合が多いので注意が必要です。
最初に「症状リンク集」を載せましたが、これから1つ1つの症状を詳しく説明していきますね。(リンクでつながる記事に少し手を加えていく予定です。)
今回の記事は、介護初心者には、見慣れない用語や名前が多く、最初は難しく感じられると思いますが、とても重要な情報です。少し長いですが、必ず読んで下さい。
アルツハイマー病など他の認知症と診断されている方、うつ病等と診断されている方でも急に症状が悪化した時は、薬の副作用を疑い、調べてみて下さい。
ちょっと長いですが、最重要項目ですので、最後までお付き合い下さいね。
<レビー小体型認知症の症状は、多種多様かつ個人差が非常に大きい>
『レビー小体は、脳内だけでなく全身の自律神経(心臓、胃、腸、皮膚など)に現われ、それが自律神経症状(自律神経障害)を起こす(レビー小体型認知症の発見者小坂憲司著「第二の認知症」P.88)』ことも一因です。
私(しば)の母の病名を人に言うと、反応は、ほとんど同じです。
「え、海老?ベビー?正体って??・・へぇ〜。初めて聞いた・・」
これは、眼科医からも言われました。
では、”誰も知らない”「レビー小体型認知症」とは、一体何でしょう?