レビー小体型認知症の3大症状の2つ目です。(他2つは、幻視と認知の変動)
この症状から始まった方の多くは、パーキンソン病と診断されます。
(パーキンソン病とレビー小体型認知症とは兄弟のような関係です。→記事)
私の母もこのタイプで、5年間パーキン病と診断されていました。
スキーヤーのように足を開いて膝も腰も曲がったまま立ち、極端な小股・すり足でヨチヨチ歩いていました。(手は振らず、前方に垂れたまま)
注意力低下はありましたが、記憶障害は気が付きませんでした。
71歳で幻視と妄想が急激に悪化。主治医(公立総合病院の神経内科)に相談するも「幻視はパーキンソン病薬の副作用。脳に萎縮はないので認知症ではない」
「レビーでは?」という家族の問いは、完全に否定されました。レビーの症状が出そろっていたにも関わらずです。
(レビー初期には脳の萎縮はなく、長谷川式の検査でも高得点の場合がある。)
これは、今も頻繁に聞く話です。有名な大学病院でも起こります。パーキンソン病と診断された方は、どうぞ症状に気を付けて下さい。
しかしパーキンソン症状から始まる方は、小数派です(後述)。
どの段階でパーキンソン症状が出るかは人によって大きく違い、最期までこの症状の出ない方もいます。
パーキンソン症状から始まるタイプでは、初期から「歩く時に違和感を感じる」「歩き方や動作が遅くなる」「すぐ疲れて長距離を歩けなくなる」「転びやすくなる」等の症状を自覚しますが、『歳のせい』と思う方も多いようです。
こうした傾向は、徐々にひどくなっていきますが、進行速度にも大きな個人差があります。
同時に体調不良や尿失禁等の自律神経症状や抑うつ症状等も現われやすいのですが、パーキンソン病も同じ症状が出るので区別が付きにくいのです。
しかし違いは、あります。
「薬剤過敏性(薬物、特に抗精神病薬に対して悪い影響が現われやすい特徴)は、レビー小体型認知症特有のものでパーキンソン病やアルツハイマー型など他の認知症にはあまり見られない。」「第二の認知症」(P.92)
(→副作用の体験談)(→パーキンソン病との見極め)
レビーの発見者である小坂憲司医師の「第二の認知症 増えるレビー小体型認知症の今」という本に書かれた内容を見ていきましょう。
< パーキンソン症状 >
パーキンソン症状は、幻視、認知の変動に並ぶレビー小体型認知症の3大症状の1つ。しかし記憶障害から始まる「通常型」(注1)では、3割の患者にこの症状が出ない。(P.105)
基本的にレビー小体型認知症とパーキンソン病における運動症状には殆ど差異はない。
*動きが少なくなる、遅くなる(無動・寡動)は(レビーでは)顕著な 症状。
身体を動かすことがままならないため、立ち上がる、移動する、着替ええる、
靴を履く等、あらゆる生活行為に時間がかかる。
介護者が動かそうとしても(筋肉の)抵抗感が強い。
*レビー患者では、肘が曲がっている姿がよくみられる。(筋固縮によるもの)
肘を伸ばそうとするとカクカクと歯車のような抵抗を感じる。
(歯車様固縮/歯車現象)(家族でも簡単に確認可能→方法)
*歩行時には、足首が曲がらない/歩幅が小さくなる/すり足になる/腕の振り
が小さくなる/1歩目の足が出にくい/歩き出すと止まらないなどの障害とし
て現れる。
*体が傾いたり、姿勢・バランスを保つことができない。(姿勢反射障害)
常に転倒の危険を伴う。<→具体例。どう転ぶか。レビーの転倒に伴う危険>
*パーキンソン病に特徴的な手や足の震え(振戦)やジスキネジア(身体がくね
くねと動く症状)は、レビー小体型認知症では、比較的少ない。
*レビーでは上記のパーキンソン病4大運動症状以外にも多様な症状が出る。
●まばたきが少なく顔の表情が乏しい。(仮面様顔貌)
●小声で抑揚のないしゃべり方になる。(構音障害)
●書字のとき文字が徐々に小さくなっていく。(小字症)
●進行すると咀嚼(そしゃく)や飲み込みがうまくできない嚥下障害(えんげ
障害)も。
(→関連記事「嚥下障害とその予防法」) (P.74〜76)
(注1) <レビー小体型認知症の3つの型(タイプ)>
1.「通常型」:患者数多。70歳前後で発病。アルツハイマー型記憶障害あり。
平均罹患期間(平均余命)6.4年。(注2byしば)
2.「純粋型」:患者数少。30~40歳代でパーキンソン症状で始まる人が多い。
平均罹患期間8.7年。
3.「自立神経症状型」もある。(P.105)
(注2byしば)症状の出方・進行の速度に個人差が非常に大きい病気ですので「平均余命」は、あまり参考にならないと私は思います。母は、パーキンソン病と診断された(既にレビーを発症していたと思われる)時から8年過ぎましたが元気に穏やかに生活しています。嚥下障害もあまりありません。(→関連記事・朝日新聞から)
<介護・ケアのコツ byしば>
パーキンソン病・レビーの歩行障害には、音楽やリズムが効くことが多いです。
歩行介助では「1.2.1.2」と声をかけたり、歌を歌うと足が上がります。
介助(介助者後向き歩行)時は、手ではなく肘を下から握ると安定。安心感も。
追記:河野和彦医師は、立った時の左右の足の開き方が、パーキンソン病では狭く、レビー小体型認知症・正常圧水頭症・脳血管性認知症では広い患者が多いと説明。→こちら
<関連記事>
*パーキンソン病、レビー小体型認知症との関係についてのリンク集
*「パーキンソン病とレビー小体型認知症の関係(違い)」
*カテゴリ:「レビーと各種認知症の症状と早期発見チェックリスト)」
*「レビー小体型認知症の特集記事(朝日新聞)」(非常に詳しい。)
*「パーキンソン病治療で悪化したレビー小体型認知症」新聞記事